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2012年1月31日 (火)

改札の父

「次は夏休みだな」。

 ひとりの中年男性が、青年の肩を軽く叩いてそう言うと、改札の中に入るように目で促しました。「ほら、もう時間だ。早く行きなさい」とでも言うように。口に出してそう言った訳ではありませんが、時計を指差してそこに目線を送り、顎でホームに降りるように合図をしています。一方の青年は、まだ頬に赤みの残る、おそらくは大学一年生と思われる男子です。

 正月三日の朝。中央本線・塩尻駅でのワン・シーンでした。

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(写真引用:Noboの遊楽帳「撮り鉄紀行ー塩尻~木曽福島間」)

 家族で、正月を蓼科のリゾートホテルで過ごした後、正月早々から仕事のあった僕だけがひとり大阪に向かったのは朝の8時半ごろ。乗り換えの塩尻駅で少々時間が余ったので、駅の外に出て待合室で温かいお茶を飲み、列車の時間が来たので、再度、入場しようとした改札口で見かけた光景でした。

 察するに、大学に通い始めてから初めて実家で迎えた正月を終えて、また大学のある下宿先の街へと帰るのを父親に車で駅まで見送ってもらった――そんなところだったでしょうか。このシーンが1ヶ月ほど経った今でも温かく胸に残っています。

 この半世紀ほどの間に、こういった風景は、日本のいたるところで幾度となく演じられてきたに違いないのですが、僕にとっては全く初めて目にする風景でした。

 今や自分の息子が受験勉強を始める年頃になって、ようやく僕もそういう「父子で情を交わす」リアルな場面を経験することができました。もしも、自分の息子や娘が遠く離れたところに巣立って行ってしまったら、自分はどんな表情を見せるだろうか。それを思うと、いろいろと伝えたいことはあっただろうに、ついつい言葉少なになってしまった、あの日の改札口のお父さんの気持ちが何となく判るような気がしました。

 早く夏休みになればいいのにね、お父さん。

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コメント

ちょっと違うかもしれませんが、私も嫁いでからは実家の父との関係が変わったと思っています。
実家に遊びに行っても、帰る時は必ず玄関先まで見送ってくれるようになりました。
嫁ぐ日『何があっても帰ってくるな』と言った父でした。

車内から振り返ると、手を振る父の『がんばれ』が伝わります。

親子っていいですよね。

投稿: たまき | 2012年1月31日 (火) 22:53

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