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2011年5月 2日 (月)

バングルズを聴きながら

 ゴールデン・ウィークの初日。30年近く前によく通っていた阪急塚口駅の南側にある喫茶店『英里奈(えりな)』にいってきました。

 悪友たちと通い始めたのは高校三年ぐらいからだったかなあ。いまと違って高校生が一人で喫茶店に入っていくのはすごく勇気が要りました。当時のお店は室内が暗かったですから外から必死になって中の様子を伺っても友達の所在は判りづらい。かといって、今みたいにケータイもないので友達に連絡のとりようもない。中に入って知らない大人たちにじろじろ見られるのはイヤだし。そんな訳で、初めて行ったときには店の前で散々ウロウロした果てにドアを開けたのを覚えています。ドアのカウベルがカラン、コロンと心地よい音で迎えてくれましたっけ。


 その後、浪人時代は毎日といっていいほど通いつめ、悪友が各地の大学に散り散りになってからも時折足を運んでましたが、社会人になって一時期地元を離れたときからほとんど通わなくなりました。

 今回は、数年ぶりぐらいで訪れてみたのですが、マスターもママさんも健在でした。無沙汰を詫び、ブレンド・コーヒーを注文して席に着いた途端にちょうど店内に流れてきたのはバングルズの『マニック・マンデー』。いやもう、涙チョチョ切れんばかりの懐かしさで、一気に当時の雰囲気、気分がフラッシュバックです(ちなみに1986年のヒット曲の話をしております)。改装して明るくなった店内は当時とは全然雰囲気が違うんですが、老舗の喫茶店に漂う雰囲気、空気感っていうのは不思議と変わらないものですねえ。

 マスターがサイフォンで丁寧に淹れてくれるコーヒーはしっかりと濃い目で大人の味ですが、不思議なのは、浪人生当時にこんな深い味わいを経験した覚えがほとんどないんです。いつもアイスコーヒーだったからなのか、レモンスカッシュとかクリームソーダとかのお子様メニューが好きだったからなのか。四半世紀の時を経て、ようやくコーヒーの味のわかるオトナになったのかもしれません。

 あの日、どう見ても幼さの残る少年を、訝しがることもなく「いらっしゃい」と丁寧に言葉を掛けて、きちんと一人前の注文を受けてくれたんですよねえ、この店の人たちは。そういう公平で誠意のある扱いを受けながら、17、18、19歳の頃をこの店で過ごした僕たちは、少しずつ大人の仲間入りをさせてもらったのかもしれません。あの頃はわからなかったマスターのコーヒーの味。わかるようになって嬉しかったです。

 マスターのダンディさとママさんの笑顔はあの頃のまま。マスター、ママさん、草臥れた大人になってしまいましたけど、また来ますね。ヒット曲と同じように懐かしく感じるドアのカウベルの響きを耳にしまってお店を後にしました。

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