« スターバックス『コーヒーセミナー』 | トップページ | 砂と竜巻(と芝生とボク) »

2011年4月10日 (日)

映画『トゥルー・グリット』

 3/11の地震以来、きちんとウェアを着てそこそこのペースで自転車に乗ったのは今日が初めてです。毎年、この時期は昼間から夕方に掛けて乗ります。桜並木が車道に覆いかぶさるようにして作ってくれる花のトンネルを潜るのが楽しみなので。

Photo やがて、桜の便りは北の国にも届くでしょう。
 淡いピンクの花びらが、ひとひらでも多く彼の地の人たちの目を楽しませ、心を癒してくれますように。

 さて、映画『トゥルー・グリット』を観てから半月ほど経つのですが、この映画を観終わってすぐに感じたことが、何故か頭からずっと離れずにいます。
 それは――、

 人は、人生を進める中で次々に何かを失っていく存在なのではないか。
 何かを失うことと引き換えに、何を得るかで人生の価値は決まるのではないか。

 ということです。

 父の仇打ちを願う少女とそれに協力する保安官とテキサス・レンジャーの二人。全編を通じて荒くれ者、ならず者がわんさかと登場する西部劇ど真ん中のストーリー(それもそのはず、本作は1969年のアカデミー賞主演男優賞受賞作『勇気ある追跡』ジョン・ウェイン主演のリメイク版)。挫折と危機の連続を、それを一つ一つ乗り越えていく不屈の勇気(トゥルー・グリット)を、監督のコーエン兄弟が見事に描き切ってみせてくれます。

 ただ、その乗り越え方というのが、何とも切なくて儚い。

 バキューンと一発、目にも止まらぬ早打ちで危機一髪のところで少女のピンチを救ったり。その結果、二人は恋に落ちたり。保安官が名誉と栄光を取り戻したり。なんて華やかな展開は、この映画ではいっさい観られません。

 父を亡くした少女は、タフな交渉術で馬と金を取り戻し、保安官を雇いリベンジへの旅へと向かうのですが、途中で何人もの命が失われます。時に見知らぬ死体と向き合い、時に成り行き上いたしかたなく、時に決闘のような形で。主人公たちも撃ち、撃たれ、仲間割れをして、心身ともにどんどん傷んでいくのです。最後には必死になって取り戻した父の形見ともいえる馬さえも失わざるを得なくなります。

 この辺が、非常に厳しくって切ない。

 人生そんな甘いもんじゃないよ。ハッピーエンドだけを都合よく恵んでくれる神様は、この世の中にはいませんよ。荒れ狂う大河を溺れそうになりながらたった一人で渡りきっても、殺人犯を相手に震える指で引き金を引いて復讐の弾丸(ブリッド)を撃ち込むことができても、それを祝うように空に満天の星が降るように輝いていても。ご褒美だけをくれるような都合のいい神様はいない。

 少女の復讐を他の何かに置き換えてもいいのかもしれません。仕事も恋愛も、子育ても、受験勉強も、スポーツも。頑張った人にはハッピーな結末が待っている。努力はきっと報われる。もちろん、人生にそういう法則はあります。けれど同時に僕たちの人生の旅路にはいつでも理不尽な出来事がガラガラヘビのように鎌首を持ち上げて待ち伏せしているんです。

 コーエン兄弟の言いたかったことはそういうことじゃないだろうか。

 桜は今年も美しかったです。
 自分ではどうにもならない自然の怖さを思い知らされたからこそ、今年はいつも以上に、美しいものを美しいと感じられるのかもしれません。

|

« スターバックス『コーヒーセミナー』 | トップページ | 砂と竜巻(と芝生とボク) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56831/51343158

この記事へのトラックバック一覧です: 映画『トゥルー・グリット』:

» トゥルー・グリット [LOVE Cinemas 調布]
『ノーカントリー』のコーエン兄弟が監督し、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めた西部劇。今年のアカデミー賞で作品賞、主演男女優賞、監督賞など10部門にノミネートされた。主演は昨年のオスカー俳優ジェフ・ブリッジス、共演にマット・デイモン、ジョシュ・ブローリン。弱冠14歳で助演女優賞にノミネートされたヘイリー・スタインフェルドの好演に驚かされる。... [続きを読む]

受信: 2011年4月10日 (日) 21:31

» トゥルー・グリット [キノ2]
★ネタバレ注意★  コーエン兄弟の西部劇!  ジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』(1969年)の原作となったチャールズ・ポーティスの同名小説をもとにして撮った映画だそうですが、監督にリメイクという認識はなく、あくまで同じ原作に基づいた別の映画、ということらしいです。  2010年アカデミー賞においては、作品賞、主演男優賞(ジェフ・ブリッジス)、助演女優賞(ヘイリー・スタインフェルド)、監督賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、脚色賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、撮影賞、美術賞... [続きを読む]

受信: 2011年4月11日 (月) 20:55

» トゥルー・グリット [風に吹かれて]
タフガール 公式サイト http://www.truegrit.jpジョン・ウェイン主演「勇気ある追跡」(1969)のリメイク原作: トゥルー・グリット (チャールズ・ポーティス著)監督: ジョエル& [続きを読む]

受信: 2011年4月18日 (月) 07:33

» ■映画『トゥルー・グリット』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
でっぷりと膨らんだお腹をさらけ出し、いぎたなく眠りこけたりしてしまうジェフ・ブリッジスの演技がなんとも素晴らしい、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の最新作『トゥルー・グリット』。 ジェフ・ブリッジス演じる酔いどれ保安官、コグバーンだけじゃなく、頑なで小生意気... [続きを読む]

受信: 2011年4月24日 (日) 02:25

» 映画:トゥルー・グリット [よしなしごと]
 親は西部劇が好きなのですが、親父が見る西部劇はどうも古くさくて好きになれなかったんです。と言うわけでまともに西部劇を見た事もなかったのですが、うちの親父の好きだった作品の1つ勇気ある追跡がコーエン兄弟によってリメイクされるという事で観に行こうと思っていました。そんな時、試写会に当たったので楽しみにしていたんです。ところが震災で試写会会場が打撃を受け中止に。試写会時に配ろうと思っていた招待券を希望者には郵送するという連絡があり、ありがたくいただく事にして、観に行ってきました。と...... [続きを読む]

受信: 2011年5月 9日 (月) 08:00

« スターバックス『コーヒーセミナー』 | トップページ | 砂と竜巻(と芝生とボク) »