映画『英国王のスピーチ』
お隣さんの庭に植わっている梅の木に花が咲き始めました。地震や津波で僕らを苦しめるのも自然なら、花や草木がその美しい姿や芳しい香りで僕らを癒してくれるのもまた自然のなせる業です。今年の春は少々複雑な思いで迎えることになりそうです。
少し前に映画『英国王のスピーチ』を観ました。この映画は吃音症(どもり)の国王とその治療にあたった先生の友情の物語なのですが、その後、東日本大震災が起こってから、いろいろな記者会見を生中継で見る機会が増えてからというものの、人前で話すことって凄く大切で難しいことなんだなあと、この映画を思い出しながら、改めて感じています。
映画に登場する国王は吃音症で上手くスピーチできない。吃音が気になってさらに緊張してしまう。そして、その治療にあたる人物自身もオーストラリア出身で訛りに苦しみ、何度もオーディションに落ちては舞台俳優への夢を果たせないでいるという設定。人前で演説なんてしたくもない人物の吃音を、人前で演じたくてもなかなか認めてもらえない人物が治療にあたるんですね。このあたりが実に良く出来てました。
翻って、今回の震災に関するスピーチ。
一番印象に残り、感動したのは、原発での放水作業を成功させた直後に会見した東京消防庁の三人の消防士の会見でした。それぞれ、現場の長として自分たちで判断し、自分たちの部下に命がけの仕事を命じ、そしてまた自らも放射能の危険に身をさらす大仕事を終えた直後。目の動きには緊張がみなぎり、時に口調は震えがちになり、現場の緊張感、興奮振りをまだ引きずってました。ぎこちなく不十分な説明になるのも無理はないかなと思われた会見は、あにはからんや、ものすごい説得力にあふれていました。
実に淡々と、作業の手順を説明し、経過を報告し、感想を述べた三人の言葉は、放射能の恐怖と戦いながら、国の安全を守る仕事を『自分たちの手で』やりとげた実感に溢れるものでした。だから、すごく説得力があったんじゃないかなと思うんです。
今回の震災で、政府や東京電力などいろいろな方が記者会見を開いていますが、中には資料を読み上げるだけのような方も見受けられます。実際にはそうではないのかもしれませんが、何となくそういう印象を受けるものがあるんです。
人の前で話すことの巧拙は、結局のところ、「自分の言葉になっているか」「言葉に自分の感情を込めて伝えられているか」なんじゃないでしょうか。
くだんの映画でも、国王は最後に感動的なスピーチをします。そのスピーチを生んだのは、劇的な吃音矯正プログラムとかではなく、自分の国を救いたいと願う強い気持ちと国王としてのプライド、そしてそれを支えようとする温かい友情でした。
映画を観てからまだひと月も経ってないのですけれど、いま、もう一度観たら、どんな風に感じるんだろう。まだ、観ていない人は、是非。
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